目が覚めて、体はダルく、頭は朦朧。
二度寝をしようと目を閉じて頑張るが、眠りにつくことができない。
カーテン越しの薄明かりの中で、醒めるでもなく眠るでもなく、
ただぼんやりと、佇んでいる。
いったいいつのことのことだっけ。
どこかのバーでたまたま隣にすわって、どちらからともなく話を始めたんだ。
話の内容はほとんど覚えていないけれど、
ノリがあったというかウマがあったというか、
細く長い付き合いが続いている。
何をする気も起こらず、ごろごろと布団の中で過ごす。
閉めっぱなしのカーテンのために、部屋の中は薄明るい。
クリーム色の光に満ちた部屋で、
朝なのか昼なのか、夕方なのか夜なのかわからない時間が流れる。
神の存在について熱い議論を交わした若き医学生の二人は、
ともに精神科医となる。
それぞれに仕事に追われているうちに、いつしか青臭い議論もしなくなった。
そして、二人は再会する。
50年の年月を経て、
人生の終わりを迎えて。
神様がいるかどうか分からない。
むしろ、いないんじゃないか、と思う気持ちのほうが強いな。」
数十年の信仰生活を過ごしたTが、さらりと言う。
神様はいるよ、
クリスチャンのTは当然そう言うと期待していたBは、
驚く。
神様なんてものを信じているのか?>
本の中のセリフが夢の中で聞こえてくる。
なだいなだ、ナーダ・イ・ナーダ、Nada y nada。
何にもない何にもない。
スペイン語だかラテン語だかで、nadaは無。
無と、無。
奇妙で美しい、ペンネーム。
眠りに落ちる寸前の、思考のきれっぱし。
家を出る。
外はすっかり日が暮れて、夜になっている。
薄暗い街灯だけが、細い裏道を照らす。
以前はこの街灯もまぶしいばかりに明るかった気がするが。
気づかぬうちにだいぶ暗くなったようだ。
まあ何でも寿命はあるし、街灯の蛍光灯も切れかかっているのだろう。
チカチカと街灯が点滅を始めた。
ふっと街灯が切れた。
あたりは真暗闇になった。
自分の足元さえも見えなくなってしまった。
目の前には暗黒だけが広がっている。
あるのはただ、無、ナーダ。
Nada、Nada。
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