約1年が経ち、ここのところこちらでの生活にだいぶ慣れたようだ。
慣れというのはありがたいもので、以前ならいろいろとストレスに感じていたような出来事にも
平静に対処できるようになった。
その反面、多少の退屈を感じないでもない。
もともと安定と退屈はコインの裏表なのだから無理もないけれど、
平静な暮らしではやはりどこかもの足りないような気がする。
感動や感激と無縁の人生ではもったいない、
人生は感動の連続であるべきだとぼくは思う。
どうしたらそんな波乱万丈の暮らしが出来るのだろう、
そんなふうに真剣に模索して、とうとう一つの答えに到達した。
キーワードは、中南米。
いわゆるラティーノたちの情熱的な生き様を見よ。
彼らは嬉しいときには夜どおし踊り、
悲しいときには心の底から涙を流す。
奈落よりも深い絶望と、
太陽よりもまぶしい希望を抱え、
中南米の男は今日も血をたぎらせて生きている。
この地球の裏で。
生き様を真似れば、ぼくの退屈な日常も一変するはずだ。
そう確信したぼくは、ちょっと前からラティーノたちの生き方を真似し始めた。
その効果はみるみる現れて、
ぼくは今では絶望と希望とあいだで日々を送っている。
絶望と希望のあいだで一日が終わろうとしている。
奈落よりも深く、漆黒よりも暗い絶望と、
太陽よりもまぶしく、天空にも昇る希望のちょうど真ん中、
つまり可もなく不可もない普通の日々が、こうして淡々と続いていく。