_ 夜。
窓を開けて風を呼び込み、
りりりと鳴く虫の音を聞く。
ゆるりと足もとを涼しさが流れていき、
こっそりと秋が始まろうとする。
_ そうはさせじと
明日も夏は頑張るのだが、
いかんせん時の流れは残酷で、
強い日差しをお払い箱にする。
_ 子供らは
宿題に追われ、
時計よ戻れと虚しく祈る。
7月20日、
目の前には無限の可能性の日々が広がっていたはずなのだが、
どうしたことか早8月も終わり、
きりきりと始業式が迫り来るのだ。
_ なんたることだ、
あきれたもんだ、
40日も浪費した。
あれもしてない、これもしてない、
ただただ無為に時間を過ごした。
せっかくの夏休みを、ああほんとうにもったいない。
_ だがしかし
5年10年15年が経ち、
今や立派なオトナとなった、元のコドモは突如として気づく。
茹で上がるような亜熱帯の太陽の下でだらだらと過ごした、
あの40日の無駄で無為で無意味な日々こそが
二度とは味わうことのできない
素晴らしく豊潤で、かけがえのない日々だったのだと。