2003-04-30 終わりの始まりの途中。

_ 気がつくと

右目のまぶたが小刻みに震えていた。

最近ストレスがたまり気味で、蓄積した負のエネルギーが

まぶたのけいれんとなって出てきたのであろう。

余程注意深く見なければ周囲からはわからないだろうが

なにしろ自分のまぶたなのでとても気になる。

隙を見せるとぴくぴくと、今も小さく震えている。

_ ニュースを見ると

気が滅入ることばかり世の中で起こっているようだ。

新型肺炎は猛威を振るい、中国奥地から現れたウイルスは

カナダや南アフリカにまですごい勢いで広がった。

日に日に患者の数は増え、中国への留学生に帰国勧告が出る始末だ。

ジェット機に乗ってウイルスは拡散し、地球の裏側までも到達する。

不幸と苦痛のグローバル化。

_ 砂漠では

復興の名の下に今日も利権争いが続く。

新生アフガニスタンの話もビンラディン捕獲の話も

ここのところ聞いたおぼえがないし、

争いのさなかに倒れた名もなき者を悼むヒマは

誰にもないらしい。

自由と民主主義と平和と混乱と無秩序とコカコーラを彼の地にもたらし、

連中は今日も行く。

_ 山奥では

白装束のおかしな奴らが道を占拠し、電磁波がどうのなんて言っている。

奇妙な理論を振りかざし、白い布で森を覆い、

ブルドーザーで報道陣を追い回す。

他者に心を開かず、自らを絶対と信じ、

自分たちが<敵の攻撃>から逃れるためには

平気で他人を踏みつけにする。

電磁波よりも恐ろしいものが、画面いっぱいに映る。

_ チャンネルを変えると

古いパニック映画がやっていた。

火星人だか巨大彗星だかが襲来して、世界に終末が訪れるらしい。

画面の中では人々が逃げ惑い、人類が滅びると大騒ぎする。

日常生活はストップし、暴動が起こり、パニックがパニックを呼ぶ。

映画はまだまだ続くようだったが、

真剣に観る気にもなれずにまたチャンネルを戻す。

_ ニュースでは

増え続ける凶悪犯罪の特集が始まる。

ぼんやりとそれを見ながら、ぼくはさっきのB級パニック映画のことを思い出す。

世界が終わるって時に、映画みたいに人々がパニックになるなんてことがあるだろうか。

日常生活が手に付かなくなって、火星人や彗星のことばかり考え、

取り乱し、逃げ惑う。

そんなことはやっぱり絵空事に過ぎない。

_ ぼくが夢想を続ける間も

ニュースは北の国の核を映す。

偉大なる指導者って奴が、自信満々で演説する。

謎の肺炎、新型兵器、白い集団......。

ああそうか、なるほどね、

そういうことなんだな。

突如ぼくは納得する。

_ 世界ってのは

こういうふうに終わっていくんだな。

なんの感慨もなくそう思い、

ぼくはテレビの電源を切った。

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_ itotetsu (2003-05-01 11:34)

楽しい終末をおすごしください。(^^;